年末調整担当者のかた必見!平成30年分の年末調整で配偶者控除&配偶者特別控除の大改正に要注意!【406】

平成30年も残すところあと2か月、年末が近づいてきています。

年末が近づいてくると、会社などの給与計算を担当されている人や会計業界関係者は、年末調整業務を意識されるんじゃないでしょうか?
年末年始のこまごまとした事務作業。。書類も多くなりがちです。。

平成30年の年末調整はご存じのとおり、配偶者控除&配偶者特別控除が昨年と比べて大幅に改正されているので注意が必要です。

大改正した理由

大改正した理由は財務省HPに以下のように述べられています。(以下、私が編集したダイジェスト版です。)

従来、年末を前に10月頃から配偶者がパート収入を年間103万円以下におさえようと就業時間を調整する傾向がありました。
いわゆる「103万円の壁」のことです。

「103万円の壁」により就業調整が行われる理由は以下のとおり。

就業調整の理由①

「配偶者控除において38万円の控除が受けられる給与所得者である配偶者の収入上限103万円という水準が、企業独自で採用している配偶者手当制度等の支給基準に援用されていること。」(財務省HPより引用)

ちょっと何言っているか分かりませんね。(笑)
翻訳してみましょう。夫がフルタイム正社員で、妻はパート勤務という家庭の場合を想定してます。

【訳】配偶者控除38万円を受けられる妻のパート収入103万円という収入水準が、夫の勤めている会社で採用している配偶者手当制度などの支給基準に使いまわされていること。

つまり、妻のパート収入が103万円を超えると、夫の給与明細についていた手当(配偶者手当)が無くなってしまうケースに言及しています。
夫に支給される手当を失ってまで妻はパート収入(就業時間)を増やさないため、妻の就業調整が行われてしまうと言っています。

就業調整の理由②

配偶者の給与収入を103万円以下におさえなければ、配偶者の給与についても税金を負担しなければならないという心理的な壁として作用している。(財務省HPより引用)

これは分かりやすいですね。
所得税がかからない妻のパート収入は年間103万円以下という情報が有名になりすぎた結果、「103万円の壁」がパート勤務をする妻に心理的なプレッシャーを与え、妻の就業調整を促しているということでしょう。
実際には妻に生命保険料控除や住宅ローン控除があれば、103万円を超えても所得税がかからないことはありえます。

就業調整をおさえて、人手不足問題を解決するために、配偶者控除&配偶者特別控除を大改正したそうです。
その結果、年末調整の実務は複雑化しました。(-_-;)
年末調整ソフトを使わないで手計算で年末調整される方は特にご注意ください。

NEW!配偶者控除等申告書の登場

大改正の結果、平成30年分の年末調整から配偶者控除&配偶者特別控除が複雑になりました。

具体的にいうと、配偶者控除金額が夫の給与収入水準に応じて3段階に変化するようになりました。(老人控除対象配偶者の配偶者控除額も改正されていますがここでは省略します。)
詳細は国税庁のHPに譲りますが、さらっと触れると、夫の給与収入が多くなるほど配偶者控除金額が段階式に減額されます。
38万円→26万円→13万円→0円(配偶者控除適用なし)といった具合です。

同じく配偶者特別控除金額が、妻のパート収入水準と夫の給与収入水準に応じて変化するようになりました。
その結果、配偶者特別控除額のパターンは27パターンも存在することになりました。

このような複雑なパターンに対応するため、配偶者控除等申告書(等は配偶者特別控除)という新しい申告書が登場しています。
様式は国税庁HPに譲りますが、その内容は、夫と妻の合計所得金額を計算し、夫の合計所得金額をA~Cに、妻の合計所得金額を①~④に区分して、控除額を計算するための申告書です。

昨年まで存在しなかった申告書なので、年末調整担当者はしっかり理解する必要があるでしょう。

配偶者の合計所得金額の見積精度を高める必要あり

配偶者控除&配偶者特別控除の控除額の決定には、給与所得者本人(夫)と配偶者(妻)の合計所得の見積額が必要になります。

そのため昨年以上に、平成30年分の合計所得見積額の精度を高める必要があります。

この見積が甘いと、1回の年末調整で完了することができず、再調整が必要になってしまいます。
(できれば年末調整の再調整なんてやりたくないですよね。)

というのも、配偶者の収入金額が5万円の区切りごとに配偶者特別控除額が増減するからです。

たとえば、(夫の合計所得金額を900万円以下と仮定して)妻のパート収入見積額が155万円だった場合は控除額36万円ですが、実際は見積より1万円増えて156万円だった場合は控除額が31万円に減額されてしまいます。
この場合、見積額に基づいて年末調整しているでしょうから、夫は控除額36万円で年末調整を完了しています。
しかし実際の妻の収入に基づく控除額は31万円だったわけですから、控除額が大きすぎる(年末調整還付金が多い)ことになります。
妻のパート収入見積額をわずか1万円予測からズレただけで、年末調整の再調整をしなければいけなくなってしまいます。

そのため、この状況をできるだけ回避するには、配偶者(妻)のパート収入等をできるだけ正確に見積もる必要があります。
この点で、平成29年分にくらべて平成30年分は配偶者の収入をより正確に見積もる必要が生じてきています。

しかし、こればっかりは年末調整担当者だけでは、対応できないため、給与所得者(年末調整対象者)の協力を得る必要があるでしょう。

以上です。また明日!

まとめ

・「103万円の壁」による就業調整を解消し、人手不足問題に手を打つため配偶者控除&配偶者特別控除を大改正
・配偶者控除&配偶者特別控除が複雑化したため、「配偶者等申告書」を新たに登場
・年末調整対象者の協力をえて、配偶者の収入の見積精度を高める必要がある

おまけ

【本日の成長】
帳簿、伝票会計、試算表のレクチャーの方法を検討。

【編集後記】
尾花沢商工会様の簿記検定受講生さんに配布する論点リストを作成。
自分の受験時代も作ったなーと感慨深くなりました。

【ムスコログ】
先週末から目やにがたくさん出るな~と思っていて、午前中に眼科に行くと、アデノウィルス結膜炎という診断。
最低でも1週間は幼稚園出席停止となりました。。本人は元気で、家に居られることに喜んでいるようですが。(-_-;)

【サービスメニュー】
林伸幸の特徴&プロフィール
税務・財務顧問
経理・税務トレーニング
個別コンサルティング