役員報酬が未払いのときの源泉所得税はどうする?原則は支払ったときに徴収する。【289】

嶋遺跡公園

山形市 嶋遺跡公園にて

会社の経営者は、資金繰りが悪いとき、自分の役員報酬を未払いにせざるを得ない場合があります。

その場合、役員報酬にかかる源泉所得税を納税するのか、それとも納税しなくていいのか悩まれたことがあるかもしれません。

今回は、それについての回答です。

なおこのブログは一般の読者を対象としていますので、根拠条文などは記載は省略します。あしからず。(-_-;)

源泉徴収の原則

源泉徴収(所得税の給与天引き)制度は、原則として役員報酬を「支払ったとき」に、その役員報酬額について源泉所得税を徴収し、役員報酬を支払った月の翌月10日までに役員から徴収した(天引きした)源泉所得税を税務署に納めなければならないとしています。

したがって役員報酬が未払いであれば、いまだ「支払っていない」ため源泉所得税を徴収する必要がありません。

資金繰りが苦しくて、役員報酬を払えない状態に陥っているのに、源泉所得税を先に納めなければならないという状況は回避できます。

そのため、役員報酬の未払計上時点では、貸方に「源泉所得税の預かり金勘定」を計上する必要はありません。
したがって、未払計上した月の翌月10日までに、源泉所得税を納める義務もありません。

未払計上でも納税しておく(例外)と経理がシンプルになる

未払計上時に源泉所得税を計上せず、その翌月に源泉所得税を納めなければ資金繰り上は望ましいです。
源泉所得税の納税によって会社のお金が出ていかないからです。

しかし、未払計上時に源泉所得税を計上する経理もありえます。
未払計上時に、貸方に「源泉所得税の預かり金勘定」を計上し、その翌月10日までに、源泉所得税を納めます。
お金が出て行ってしまうため資金繰りには不利ですが、経理処理が非常にシンプルになり、管理上も楽になります。

なぜ楽になるのかというと、試算表に残高として残っている役員報酬の未払金がすべて源泉所得税を控除したあとの金額となるからです。
すでに源泉徴収された未払金のため、資金繰りに余裕が出てきたときに、シンプルにその残高を役員に支払えば足りるからです。

仮に未払計上時に源泉所得税を控除していない未払金残高とした場合、その未払金残高をまるまる役員に払ってしまうと、源泉所得税分を払いすぎになってしまいます。
つまり、シンプルに未払金残高をすべて支払うという簡単な経理処理ではダメになってしまうんです。
実際の支払いにあたり、源泉所得税がいくらなのかを計算し、それを未払金残高からマイナスした金額を支払わなければなりません。

原則と例外のどちらにするかの判断基準

源泉所得税の納税を遅らせて、資金繰りを重視する(会社の出金のタイミングを遅らせる)なら、原則を採用すべきです。
そのかわり、未払金の管理が重要になります。源泉所得税を含んだ未払金残高ということを常に意識して、その支給にあたっては支給のつど、源泉所得税を計算し、控除し、さらに支払いの翌月10日までにその源泉所得税を納付することを忘れないように注意する必要があります。

シンプルな経理を重視するなら例外を採用すべきです。
実際に役員報酬を支払うときに、未払金残高を上限に支払えばよいので、とてもシンプルになります。
未払計上時点ですでに源泉所得税が控除され、その翌月に納税も終わっているため、支払いに関して源泉所得税を考慮する必要はありません。
ただし、未払計上の翌月10日までに源泉所得税額を出金するのため、資金繰りは悪くなります。

資金繰りを重視するなら、原則どおり役員報酬を「支払った」ときの翌月10日までに源泉所得税を納税すべきでしょう。
対して経理のシンプルさを重視するなら、例外のように役員報酬を「未払計上した」ときの翌月10日までに源泉所得税を納税すべきでしょう。

以上です。また明日!

おまけ

【編集後記】

労働保険の申告書の作成と、源泉所得税(半年納付)の納付を作成し、簡易書留にて郵送しました。
両者とも7月10日が納付期限なので皆さんもお忘れないよう気をつけてくださいね!

【ムスコログ】

朝から鼻水をしきりにすするので、花粉症用の点鼻薬を噴霧しました。
そうするとピタッと止まったため、今回は風邪ではなく、花粉症の可能性が高いです。
風邪ではないようなので、安心しました。