税務署が重視している情報が読み取れる!法人事業概況説明書の改訂部分をおさらい。個人事業主も知って損なし。【135】

かなり久しぶりに「法人事業概況説明書」の様式が改訂になります。

法人事業概況書とは、税務署が法人税納税者である会社の大体のビジネス内容や規模などを、情報収集するために会社に提出させる書類(データ)です。

これには税務署が会社について少なくともこの情報は知りたい! という情報を厳選して記載を要求しています。

裏を返せば、法人事業概況書の記載内容は税務署が会社について情報収集したがっている情報と考えることができます。

個人事業主の方も、最近、税務署がどんな情報を重要視しているのかを知ることは損でないと思います。

個人事業の私は関係ないや! とスキップされず、ぜひ今回の記事をご一読いただければ。

↓ 改訂内容のリンクを貼っておきます。

国税庁リーフレット「法人事業概況説明書」の様式が改訂されます。

新様式の適用開始対象年度

平成30年4月1日以後終了事業年度分の法人税確定申告書より、改訂された法人事業概況説明書の提出が義務付けられています。

1年決算法人でいうと、平成29年5月1日からスタートする事業年度の決算から適用されます。

実はこの改訂後の様式、昨年の平成29年7月3日(月)に国税庁ホームページで「法人事業概況説明書の様式改訂について」として、すでに公表されています。

しかし去年の初夏の公表で、しばらく時間が経っています。
会計業界では一般的に夏は閑散期なので休暇をどう楽しく過ごそうか? で頭がいっぱいです(笑)
ほとんどの人が忘れているかもしれません。

納税者(法人)の方に対するリマインドと個人事業者の方への参考情報として改訂部分を見ていきます。

改訂情報(税務署が重視している情報)

改訂部分といっても、従来様式との形式的改訂もあるため、そこは省略し、実質的に意味のある改訂部分にしぼって解説していきます。

なお解説には多分に私見が含まれていることを申し添えておきます。<m(__)m>

法人番号

いわゆる法人のマイナンバーを新たに知りたがっています。

旧様式は納税地を要求していました。
法人のマイナンバーが分かれば、納税地の情報をひっぱることが可能なので省略されたと思われます。

せっかくマイナンバーに触れたので、突然ですが、マイナンバー豆知識です。
個人のマイナンバーは12桁で、法人のマイナンバーが13桁という違いがあります。
また個人マイナンバーは非公開ですが、法人のマイナンバーは公表されています。

これもリンクを貼っておきます。ここで検索すれば調べたい法人の法人マイナンバーや本店所在地も確認できます。
もう、取引先の会社に法人マイナンバーを尋ねる必要はありません。(笑)

国税庁 法人番号公表サイト

自社ホームページ(HP)の有無

自社ホームページ(HP)の有無と、HPがある場合にはそのアドレスを知りたがっています。

ここから、税務署はHPも情報収集の対象としていることが分かります。
近ごろは、個人事業であってもHPをもっていることが珍しくないので、個人事業主の方でもHPは情報収集の対象となっていると考えて間違いありません。

旧様式はHPアドレスしか要求していませんでした。つまり自社HPの有無は聞かれませんでした。
しかし、本当はHPをもっているけど、http:// で始まるアドレスを記載する人があまりにも少なかったのでしょう。たぶん記載をめんどくさがられたんだと思います。。。
とりあえずHPがあるか、ないかだけでも知りたい! あるならこっちで検索キーワードでググるから! という気持ちがこの改訂に表れています。

PCの利用状況

個人的にはここが1番興味をそそられる改訂でした。

まず、やっとPCという表現を使い始めました!(笑)
旧様式は「電子計算機」という表現。。。なんだか分かりにくかった。

このPCという表現も目を引くんですが、
(2)PCのOS→Windows  or  Mac  or  Linux
(6)メールソフト名→空欄
(7)データの保存先→クラウド or 外部記録媒体 or PCサーバ
を知りたがっているのがおもしろいですね。

(2)PCのOSを聞いてどうするんでしょうか?何かの統計をとるとか?OSごとに調査官が変わるとか?(私はMac調査のエキスパートです!という感じ?)

(6)メールソフト名を聞いているところをみると、調査の過程でEメールを確認したいという気持ちが表れていますね。

(7)データの保存先にクラウドが追加になっているところが、(クラウド会計ソフト)時代に合わせてきたなという気がします。

いずれにせよ税務調査でPCを重要な調査対象とみなしていることが分かります。

販売形態-販売チャネル

販売チャネルとは、商品サービスを消費者へ届けるまでの流通経路をいいます。

(2)販売チャネルでは、自社HP or 他社HP なのかを知りたがっています。
チャネルが他社HP・・・楽天市場などをイメージしているんでしょうか?

これもHPを軸においた近年の取引形態にあわせた改訂ですね。
そして、ここでもHPを重視していることが分かります。

社内監査

社内監査を実施しているかどうかを知りたがっています。

会計士の本業は会計監査なので、「監査」の文字を見るとどうしても「!!!」っとなってしまいます。
一種の条件反射ですね。(笑)

監査理論ではしっかりとした社内監査をしていれば、横領などの不正や不正経理のリスクが少なくなると考えます。
社内監査の有無で不正経理による脱税リスクを判断し、調査対象を選ぼうというつもりで、これを知りたがっているのでしょうか?
意図は分かりませんが、内部監査をしている会社の方が税務署には印象が良くなるでしょうね。

主要科目-特別利益&特別損失

損益計算書の主要科目として、新たに特別利益と特別損失を知りたがっています。

旧様式では、営業損益→支払利息割引料→税引前当期純利益でした。
しかし、新様式では営業損益→特別利益→特別損失→税引前当期純利益という記載に改訂されています。

おそらく勘定科目性質上、支払利息よりも特別利益&特別損失の方が、金額的にも質的にも重要性が高いと判断したのでしょう。
特に特別損失には、減損損失やリストラ損失が臨時かつ多額に計上される可能性があるため、このような判断をしたと推察します。
ちなみに減損損失は法人税の計算上は経費(損金)になりません。余談ですが。

まとめ

・久しぶりに法人税事業概況説明書が改訂される
・その改訂内容は税務署が納税者について特に知りたい情報
・PCやHPを税務調査時の重要な情報収集対象としたがっているようだ

おまけ

【編集後記】

午後から有料の税務相談でした。
今回は副業についてのご相談でした。
これから世間の流れは副業OK、副業される方は確実に申告されることをおすすめします。

【ムスコログ】

通っている幼稚園の規則では、明日はまだ登園できないそうです。
息子本人は、タミフル効果ですっかり元気になり、暇をもてあましているようです。
見かねて、絵本「おしり探偵」を新しく買い、父が落語風に声色を変え、本気で読み聞かせています。!(^^)!

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