会計と税務(税法)はそもそも目的が違う。ただし中小企業では税務寄りの決算書になる。【266】

ライン寄り

一般の方は会計も税務も同じものだと考えられているかもしれません。

でも実は会計と税務って、そもそも基本的な目的が違うんです。

税理士や会計士もしくは会計事務所経験者は、当然その違いを知っているんですが、一般の方でそこまで知っている方はほぼいません。

そこで、今回はその違いについて解説したいと思います。

会計と税務の基本的な目的

会計と税務には、それぞれ全体を貫く基本的な目的があります。

このブログ記事のタイトルのように、それらはそもそも全く別の目的によって形成されています。

会計の基本的な目的はこうです。

企業の①一定時点の財政状態および②一定期間の経営成績を③利害関係者に報告するという目的です。

かみ砕いて説明すると、
会社の①決算日時点の資産と負債および純資産の状態と②1年間という会計期間の業績を③株主や金融機関などの会社情報を知りたがっている人に伝えるという目的です。
また会計は英語のように全世界の共通言語のようなものです。どこの国の会計でも基本はほとんど同じです。そのため会計はグローバルなものといわれます。

これに対して、税務(税法)の基本的な目的はこうです。

①課税の公平を維持し②国の政策への配慮するという考え方です。

かみ砕いて説明すると、
①税金を負担する能力に応じて全ての納税者に平等に税を負担してもらうことと②国の政策を後押しするような税制を実現するという目的です。
②は少し分かりにくいかもしれません。
具体例を挙げると住宅ローン控除です。
過去に国は国民のマイホーム取得を推奨する政策をとりました。
それを後押しするため、減税効果のある住宅ローン控除という税制を設けたという経緯があります。
そしてこれは現在もなお続いています。

日本の税務は日本国内でしか通用しません。外国に行くとその国の税務があります。そのため、税務(税法)はローカルなものと言えるでしょう。

税務は途中まで会計の計算を借用する

会社に関係する法人税の話しになりますが、税務は会計の計算結果を借用して、その税務計算を行います。

それがよく分かるのが法人税確定申告書の別表4です。

この表の最上部のスタートは会計の計算結果である当期純利益です。

この当期純利益を会計から借用し、ここから税務特有の計算が始まります。

具体的には当期純利益に税務上は経費とならないものを加算したり、収益とならないものを減算したりします(税務調整)。

この結果、別表4の末尾に計上される所得金額は税務上の利益になり、これに税率を掛けて法人税額を計算します。

会計と税務は基本的な目的は違いますが、税務側で会計の計算結果を借用しているといえます。

中小企業は税務寄りの決算書になる

上場会社などの大企業の決算書は、その報告対象者が多種多様で想定利用者数も中小企業の比較にならないほど多数います。

そのため、外部利害関係者に財務報告をするという純粋な会計の目的にしたがって決算書を作成します。

その結果、大企業の決算書は会計の目的を忠実に反映したものになります。
その決算書が会計寄りかどうかは、貸借対照表に繰延税金資産もしくは繰延税金負債があるかどうか、損益計算書に法人税等調整額があるかどうかで確認できます。
それらのやや特殊な勘定科目があれば、その決算書は会計寄りの決算書だといえます。

日本の一般的な中小企業の決算書は、前述の繰延税金資産や繰延税金負債、法人税等調整額などの勘定科目は出てこないでしょう。
それはその決算書が税務寄り決算書になっていることを意味します。

中小企業の決算書は、大企業ほど多種多様な利害関係者への財務報告を想定されていないため、純粋な会計の目的を反映した決算書である必要がありません。

そのため中小企業の決算書は税務寄りの決算書になっていることがほとんどです。

以上、また明日!

おまけ

【編集後記】

夏日でとても暑い日でした。
洗濯物はよく乾きましたが、仕事の進みはイマイチでしたね。
やっぱり暑すぎるのも問題ありますね。(-_-;)

【ムスコログ】

朝起きてみると、寝始めた時と逆さに眠っていました。
掛け布団(タオルケット)をブッ飛ばして。
寝相が悪い。でも熟睡のサインです。
子どもは体温高いから、掛けなおす必要はないそうです、