配偶者控除と配偶者特別控除の要件に、給与所得者本人の所得制限を追加して複雑化。「給与所得者の配偶者控除等申告書」が新登場。【329】

酒田大獅子一家

年末までたっぷり時間のある葉月(8月)、税務に関係していない人もしていない人も、お忘れかもしれません。

今年(平成30年分)の年末調整は、大きな改正の適用初年度だということを。

この改正は今年の年末調整実務に大きな影響を与えることになるでしょう。

配偶者控除と配偶者特別控除の改正

私が実務的に気になる、税額に影響を与える改正は以下の4点です。

①配偶者控除の控除額が改正
②配偶者控除を受けるにあたり給与所得者に所得制限が新たに設けられた(規制強化)
③配偶者特別控除の控除額が改正
④配偶者特別控除の対象となる配偶者の所得制限が緩和された

なお「給与所得者」とは、配偶者控除または配偶者特別控除を受けようとしている者をいいます。
(夫がサラリーマンで妻が専業主婦の場合の夫のことをいいます。)

②の給与所得者の所得制限は、給与所得者の合計所得金額(=給与収入ー給与所得控除)が1,000万円を超える(給与等の収入金額が1,220万円超)場合に、配偶者控除の適用を受けることができないという制限です。
改正前は、給与所得者の合計所得金額の制限はありませんでした。

そのため、たとえば夫がどんなに高額な給与(役員報酬)をもらっているサラリーマン(役員)であっても、妻が専業主婦という世帯の場合、平成29年分までは配偶者控除を38万円とれていました。

しかし平成30年分では配偶者控除がとれない(ゼロ円)ということになります。
この世帯の場合、増税ということになります。

④の配偶者特別控除の対象となる配偶者の所得制限の緩和は、配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下(給与収入でいうと103万円超201万円以下)というように所得要件が緩和されたということです。

改正前は配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満(給与収入でいうと103万円超141万円以下)でしたから、配偶者の合計所得金額要件が47万円分増額され緩和されたといえるでしょう。
これにより、配偶者の就業時間の増加を促そうとしているようです。
社会保険料の問題もあり、これだけで就業時間が増えるとは私には思えませんが。

なお、ここでいう「給与収入」とは給与の総額(社会保険料や税額を控除する前の金額)をいいます。

配偶者控除等の控除額の算定が複雑化

平成29年分まで、配偶者控除と配偶者特別控除を適用できるかどうか、いくら控除額をとれるかは、シンプルに配偶者の収入(合計所得)さえ確認すれば足りました。
それは給与所得者本人の所得は要件に入っていなかったからです。

しかし平成30年分は、配偶者の収入(合計所得)を確認するだけでは足らず、給与所得者本人の所得も確認する必要があります。
しかも配偶者控除額または配偶者特別控除額にまで、給与所得者本人の所得が影響するようになりました。

つまり、配偶者の所得と給与所得者本人の所得という2つの基準で、配偶者控除額と配偶者特別控除額を算定することが必要になりました。

うーん。給与所得者本人の所得という要件を追加して、めんどうなことになっています。

この点は、平成30年の年末調整で年末調整担当者を悩ませるでしょう。(とくに年末調整ソフトを利用していない人)

年末調整の申告書も分離して独立

平成29年分まで提出していた「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」(書類の右上に「保・配特」と記載がある書類)が廃止になり、以下の2つに分離独立することになりました。

・「給与所得者の保険料控除申告書」
・「給与所得者の配偶者控除等申告書」

これまで1枚でまとまっていた申告書ですが、配偶者控除等の適用要件が複雑になり、その判定のため紙面スペースが必要になったため、上記2つの申告書に分離独立させたんだと思います。

配偶者控除等は給与所得者の所得制限も加えられたため、要件が改正前に比べて複雑化したためです。

配偶者控除等の判定と控除額の算定を抽出した結果、保険料控除の部分だけが取り残されて、「給与所得者の保険料控除申告書」になったのではないでしょうか。

以上です。また明日!

まとめ

・配偶者控除を受けるにあたり給与所得者に所得制限が新たに設けられた(規制強化)
・配偶者特別控除の対象となる配偶者の所得制限が緩和された
・給与所得者本人の所得という要件を追加した結果、控除額の算定が複雑になった
・給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」に分離独立させた

おまけ

【本日の成長】

平成30年分の年末調整について勉強

【編集後記】

wordでレジュメ原稿作成をがっつりと。
平成30年分から配偶者控除と配偶者特別控除が大きく改正となり、その部分の原稿作成に時間がかかりそうです。。

【ムスコログ】

夏かぜによる発熱は完全にひきました。
でも、いつもより睡眠時間が長いようです。
熱はひいてもまだ体調は万全じゃないようです。

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