個人事業(所得税)の開業費ってなに?どこまで含まれるの?【182】

店舗型ビジネス(飲食店など)に代表されるように、開業するために、かなり大きな金額が必要なビジネスもあります。
大きな金額でなかったとしても、開業準備のために経費を支払う場合がほとんどでしょう。
今回は、個人事業(所得税)の開業費の範囲についてのお話。

開業費とは何か?

開業費とは、繰延資産のうちの1つで、事業所得などを生ずべき事業を開始するまでの間に、開業準備のために特別に支出する費用をいい、例えば、広告宣伝費、接待費、旅費、調査費、開業のために特に借り入れた負債の利子、土地・建物の賃借料、開業準備のために消費された水道光熱費等をいいます。

つまり、開業のために支出したすべての経費が開業費です。

なお開業費には1個あたりの金額が税抜10万円以上の固定資産を含みません。
固定資産は減価償却という費用化の手続きを通して減価償却費という経費になるためです。

開業費は、その費用化の方法(償却方法)は5年間均等償却か、任意償却のどちらかを選べます。
5年間均等償却は、例えば、開業費が100万だった場合に毎年20万円で5年で均等に費用にするということです。
任意償却は、いつ・いくら費用化してもOKという償却方法で、支出年度で全額費用化もOKですし、何年間も費用化しなくてOKです。

 開業費の要件

開業費について任意償却を選択すると、その事業年度の事業等の利益状況をみて、開業費の償却額を増減でき、利益や所得税額を増減することができます。
このように、納税者に有利な開業費なので、開業費とするため以下の3要件が決まっており、すべてを満たす必要があります。

  1. 業務に関し個人が支出する費用であって、かつ支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶこと
  2. 資産の取得に要した金額とされるべき費用もしくは前払費用でないこと
  3. 開業準備のために特別に支出した費用であること

実務上、特に問題となるのは、3の「開業準備のために特別に支出した費用であること」という要件でしょう。

具体的な判定基準(私見です)

やはり、いつでも・いくらでも経費にできる(任意償却の場合)開業費を多く計上したいのが、個人事業主さんの本音ではないでしょうか。
そのため、開業費に範囲を広くとらえがちです。
広くとらえすぎ、あまり攻めすぎると税務調査で否認されたとき痛いです。

そこで「開業準備のために特別に支出した費用であること」について、私なりの判定基準をお伝えします。

ずばり、
・その経費の支払いがなければ開業できなかった。<開業と強い関連>
・その経費の支払いがなくても開業はできるが、開業準備を期に特別に支出した。<開業と中程度の関連>

この判定基準で仕分けすれば、開業費の判断としては大きく誤らないでしょう。

まとめ

・開業費は費用化の面で納税者に有利だが、範囲の広げすぎには注意
・開業費の範囲は、「その経費がなければ開業できなかった」、「その経費がなくても開業はできるが、開業準備を期に特別に支出した」

おまけ

【編集後記】

先輩会計士から、特殊会計分野のセミナー講師と執筆のお仕事オファーがありました。
興味のある分野と仕事内容なので、やらせていただきます。
仕事をご紹介いただき、大変ありがたいことです。

【ムスコログ】

預かり保育で仲良しの女の子とのツーショット写真を、幼稚園の先生からもらって喜んでいました。
その後、土日の体調不良でいけなかった穴埋めで、本日、ゲームセンターでウルトラマンファイトをやりました。
守り(防御)ターンは父が担当し、攻め(攻撃)ターンは息子が担当しました。