そもそもなぜ帳簿をつけないといけないの?究極的には税金の金額を計算するため。【226】

創業塾でいっしょに受講した創業希望者の方から、「そもそもなんで帳簿をつけないといけないの?」と質問されたことがあります。

私はプロフィールにも書いているとおり、商業高校1年生から簿記や会計学を学んでいます。

そのため帳簿を付けることが、呼吸をするように当たり前になっていたので、この質問にその場で即答できませんでした。

なぜ帳簿をつけるか?改めてそんなこと考えたことないな。商業高校から当然のように帳簿をつける勉強してきたし。なんでだろ?とその場で考えこんでしまいました。

ということで、今回は、なぜ帳簿を付けるのかについてのお話。

帳簿をつける目的は財務諸表をつくるため

帳簿をつける目的は端的にいうと「財務諸表」をつくるためです。

「財務諸表」とは、財務に関する諸々(もろもろ)の表をいいます。読んで字のごとくですね。

その中でも特にメジャーな財務表が「貸借対照表」と「損益計算書」です。会計に疎い人でも1度は見たことがあると思います。

「貸借対照表」は、簡単にいうと一定時点(主に決算日時点)の資産、負債、純資産の状態を報告する表です。

「損益計算書」は、簡単にいうと一定期間(主に1年間の会計期間)の収益から費用・損失を差し引いて、儲けの状況を報告する計算表です。

これらの「貸借対照表」や「損益計算書」は継続的な記録である帳簿をもとに分類・集計して作成されます。

そのため代表的な「財務諸表」である「貸借対照表」や「損益計算書」をつくるために帳簿を付ける必要があるんです。

財務諸表の作成目的

では、なぜ「財務諸表」をつくる必要があるのか?という質問が沸いてくると思います。

この回答のヒントになるものが企業会計原則の一般原則の単一性の原則の文言から読み取れます。

そこには「株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的種々の目的のために・・・」という表現があります。

株主総会提出目的

株式会社では、株式会社の所有者である株主が集結する株主総会で、財務諸表の承認をうける必要があります。

そのため株主に承認するかどうかの判断資料を提出するため財務諸表を作成する必要があるんです。

ただし、日本のほとんどの中小企業ではオーナー株主が代表取締役社長に就任しているため、この目的はそれほど重視されていません。経営者として自分が作成した財務諸表を株主として真剣に承認するかどうか検討する人はいないでしょう。

また個人事業の場合は、そもそも株主総会自体が存在しませんので、財務諸表の承認すら必要ありません。

信用目的

金融機関から事業資金を新たに借り入れる場合、または既に借り入れている場合、1年に1回は財務諸表の提出を求められるでしょう。

金融機関は会社や個人事業者に提出させた財務諸表に基づいて融資の与信枠を決定します。

そのため、財務諸表は金融機関の融資に関する判断資料として作成する必要があります。

ただし現金預金がたくさんあり、金融機関からの借入が必要ない場合には、この目的はそれほど重視されないでしょう。

租税目的(税金計算目的)

法人であれ、個人であれ、事業を行った場合、その事業者は自ら1年間の収益と費用を計算・集計して、その利益額を計算し、税金の金額を計算する必要があります。
法人であれば法人税、個人であれば所得税、消費税課税事業者であれば消費税も納める必要があります。

税務申告書は財務諸表の金額に一定の調整を加えて、所得金額を計算し、税額を計算します。

税額を計算するための基礎資料となるので、上場会社から中小企業等まで1年に1回は必ず財務諸表を作成する必要があります。

中小企業等(個人事業者を含む)で1番大事な目的は税金計算目的

という風に、帳簿をつけて財務諸表をつくる目的は複数あります。上記意外にも経営管理目的や外部利害関係者への財務報告目的などがあります。

いずれも重要な目的であることは間違いありません。

しかし、この中でどれか1つ、中小企業等にとって最も大事なものはどれか?と問われたら私は税金計算目的と答えます。

なぜなら、税金を計算するには財務諸表がなければ始まりませんし、税金の申告期限・納付期限も厳格に決まっており、税務調査官による厳しい税務調査を受ける可能性があるからです。

そのため、冒頭の質問の「なぜ帳簿をつけるの?」に対して、私は「いろいろあるけど税金を計算するためです。」と答えています。

おまけ

【編集後記】

夕方から山形市の遊学館で「柳亭市馬 独演会」(落語会)に参加してきました。
よく通るいい声の噺家さんで、市馬さんのように、聞き取りやすい発声でセミナーなり講義なりをやらなきゃなと肝に銘じました。

【ムスコログ】

落語会から帰ってくると、すでに眠っていました。
リビングの床には、ぬりえを切り抜いたときにでる紙の残骸が散らばっていました。。。(-_-;)
赤ちゃんは泣くのが仕事、子供は散らかすのが仕事と、自分に言い聞かせています。