納税者自身で経理することを積極的に勧める税理士が考える、顧問税理士が必要になるタイミングとその理由。【359】

山形県税理士会館

以前、個人事業者のお知り合いの方から、どれくらいの年商や従業員人数になると、顧問税理士が必要になるのか?というご質問を受けたことがあります。

この質問は、税理士によって、それぞれ違う回答が返ってくると思います。
税理士の役割をどう考えるかによって、回答が変わります。

事業の成長プロセスに仮定を設定

顧問税理士が必要になるタイミングを検討するにあたり、本稿では事業の成長プロセスに仮定を設けます。
すなわち以下の①→⑧の順番に成長する(個人事業の法人成り)と仮定します。ちなみに個人事業は貸借対照表もつくる青色申告者を想定しています。
さらっと説明すると、①がもっとも会計処理・税務申告レベルが低いです。それに対して⑧がもっともレベルが高いです。

個人事業 個人事業 個人事業 個人事業 法人 法人 法人 法人
消費税なし 消費税なし 消費税あり 消費税あり 消費税なし 消費税なし 消費税あり 消費税あり
赤字 黒字 赤字 黒字 赤字 黒字 赤字 黒字
税理士いらない 税理士いらない 税理士微妙 税理士微妙 税理士微妙 税理士微妙 税理士必要 税理士必要

上記表の5行目が、現在の私の回答です。
ちなみに「税理士微妙」というのは、いると心強いけど、いなくてもなんとか自力で税務申告できるという意味です。
「税理士いらない」とは、そのまま、税理士顧問をつける必要がないという意味です。このレベルで顧問税理士をつけると、税理士報酬をとても大きな負担に感じるでしょう。①から④の個人事業の状態であれば、低い料金でアドバイスしてくれる青色申告会や無料の税務署によるアドバイスを受ける方が良いと考えます。

「消費税あり」になると、税務リスクが上昇!

「消費税あり」とは、消費税を税務署に納める義務があることをいいます。これを「消費税課税事業者」といいます。

「消費税はあり」となると、当然ながら、消費税の申告書を作成しなければなりません。

簡易課税を選択している場合はそれほど申告の難易度は上がりません。(事業区分ごとのみなし仕入れ率を使用するため)

しかし一般課税の場合、消費税の計算構造をしっかり理解し、消費税のかかるもの・かからないものをしっかり区分して集計する必要があります。その消費税の考え方は、所得税の確定申告とはまったく考え方がちがいます。

そのため、消費税特有の考えを理解せず、付け焼刃で税務申告をすると、税務調査により思わぬ罰金を支払う可能性があります。
これが税務リスクの上昇です。

消費税の一般課税となった場合には、消費税の原則的な考え方や計算構造をしっかりマスターする必要があります。
その点で、税務申告の難易度が上がったといえるでしょうね。

「法人」になると、申告レベルが跳ね上がる!

個人事業で小さく開業し、事業を軌道にのせてから、規模を拡大して活動したり、節税対策でなどの目的で、法人化(会社など)することがあります。

この場合、それまで(個人事業のとき)所得税の申告をしていましたが、法人化することで法人税の申告をする必要があります。

所得税の申告は提出書類も少なく、内容もわりシンプルなので、一般の方もそれほど勉強しなくても申告書を作成することは可能です。

ところが、法人税の申告書になると、急に難易度が跳ね上がります。

まず専門用語が何を言っているのか分からないため、その意味を調べるところから始めると思われます。

また、法人で事業をするということは、たいてい個人事業よりも規模を拡大されていると思います。(年商も1桁や2桁大きいんじゃないでしょうか?)

そのため、税務申告にミスがあった場合そのダメージ(罰金)も1桁や2桁大きくなります。(税務リスクの急増)

上記表の⑥以降のレベルの会社は、この税務リスクをできるだけ低い水準で抑えるために、税理士と顧問契約を結ぶ価値はあると思います。

以上です。また明日!

まとめ

・所得税の申告書の作成に税理士はいらない(報酬が高いので割に合わない)
・消費税の一般課税は税務リスクが高まる(税理士を利用するか微妙)
・法人税の申告書になると作成の難易度と税務リスクが跳ね上がる(税理士を利用した方がよい)

おまけ

【本日の成長】
組織再編税制について改めて概要をおさえた。

【編集後記】
昨日でレジュメ原稿を入稿したため、いったん一区切り。
参考資料や不要紙を片付けました。
気分転換をはかるときにはデスク周りを掃除する。いつの間にか身についた習慣です。

【ムスコログ】
幼稚園から帰って、はやくお菓子を食べたいから、手洗い&うがいをしたくないと20分くらい泣いてました。
はやく洗った方が、早くおやつを食べられるんじゃ。。。と思ってしまいます。

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