報酬と努力とリスクの関係。高い報酬が得られるのは、その分、大きなリスクを負担しているから。【363】

医師や弁護士や会計士や税理士など専門家は、お客様の目に見える仕事としては、一見大した仕事をしていないように見えます。

大した仕事をしていないように見えるのに、請求金額をみると、いずれも高額です。

なんでそんなに報酬が高いの?
納得いかない人も多いと思いますので、今日は専門家のはしくれとして説得を試みてみようと思います。(笑)

一見、簡単に見えますが

実際お客様が見ることができる仕事の一部だけをみると、大変な仕事に見えないかもしれません。

他の専門家ですが、みなさんに分かりやすいように医師を例に挙げてみます。

皆さんは、風邪気味のとき、近くのクリニックで診察を受けたことがあると思います。

そのとき、通常、医師は次の行動をされます。
・いくつか質問(経過について、現在の症状について等)
・喉をの腫れを確認
・聴診器で胸の音を確認
・耳の下の腫れを確認
・必要があれば投薬の処方箋発行
・診断内容をカルテに記載
このような一連の動作を5分程度を行います。

大体これで、保険適用前(3割負担前)の診療報酬は3,400円です。
ものの5分で3,400円です。
診療報酬は3割負担で、患者の自己負担は1,000円程度なので、高額だと気づきにくいですが、60分で6人(余裕を持たせて1人10分として)を診察すれば時給換算で20,400円にもなります。

見えないところで努力

しかし医師をはじめ、弁護士も会計士も税理士などの専門家は、お客様の目に見えないところで努力をされている人がほとんどです。

手前味噌ですが、会計士は矢継ぎ早に変わる会計基準をフォローするため、日々、自己研鑽をかかせません。(会計士専用のE-learningシステムもあります。CPAオンラインといいます。)

税理士も毎年変わる税制を必死でフォローしています。そのため、日々の自己研鑽は会計士と同じく欠かせません。(税理士専用のE-learningシステムもあります。)

このように、お客様に適切なアドバイスをするために、人の見ていないところで、自己研鑽を続けているんです。
ちなみにこの自己研鑽(研修)は法定義務です。
会計士はこの研修義務を果たしていない場合、一定の監査業務を行うことができなくなります。それくらい厳しい義務なんです。

ちなみに、独占業務がある士業や師業は、当然ですが国家試験にパスしなければなりません。
まず、その資格を取得する際に、多大な時間と学費を必要とします。

リスクを負担するため報酬も高額に

また独立開業の専門家はその専門業務を行うにあたり、少なからずリスクを負担しています。

税理士であれば、税理士業務について、税務リスクを負担しています。
税務リスクとは、例えば税理士のミスで税務申告書に誤りがあり、納税者に経済的損害を与えた場合には、それを賠償する責任のことをいいます。

納税者の申告税額が大きくなればなるほど、ミスがあった場合の損害賠償額も大きくなる(リスクが高くなる)ため、税理士が納税者に請求する金額も高額になっていくという関係があります。

ちなみに申告書を実際に作ったが、申告書にサインをしない所属税理士(税理士事務所の代表ではない)はミスがあっても損害賠償責任はありません。そのミスを見逃してサインした代表税理士(開業税理士)に責任が生じます。

開業税理士の報酬が、所属税理士の報酬よりも高い理由は、この税理士業務に伴う損害賠償責任の有無(税務リスクの有無)に関係しています。
つまり、税務リスクを負担する開業税理士の報酬が高いのに対して、税務リスクを負担しない所属税理士は相対的に報酬(実態は給料ですが)が低くなります。

リスクを負担するオーナー経営者が大きな役員報酬を得て、リスクを負担しない一般の従業員がそれよりも少ない給料を得るのと同じです。

高額報酬の裏には、たゆまぬ自己研鑽の継続と大きなリスク負担があるのです。

一見、大した仕事してないのに高額報酬を請求する理由を納得いただけましたでしょうか?

以上です。また明日!

おまけ

【本日の成長】
専門家としての心構えをブラッシュアップ

【編集後記】
特殊分野の勉強が足りないため、知識補充中です。
勉強の1日でした。

【ムスコログ】
昨日のうちに発熱はおさまりましたが、鼻づまりは解消していないようです。
次の日曜日には運動会があるため、引き続き体調に気をつけなければ。

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